東京から移住し、寄り添う一杯を提供し続ける「AMBIRD」店主の運営秘話。

2019年10月、上諏訪に自家焙煎コーヒーと日本茶を扱うコーヒースタンドAMBIRDがオープンしました。こだわりのコーヒーや日本茶、そして提供するフードがおいしいと、県内外からたくさんの人が訪れています。オープンから約1年。「寄り添う一杯を」をコンセプトにしたAMBIRDを切り盛りするオーナー黒鳥さんにLocal Small Shopの運営秘話を伺ってきました。

AMBIRD外観/外にいながら窓越し(カウンター)からの購入も可能

Q .お店の紹介、自己紹介をお願いいたします。

オーナー、ロースター、バリスタをやっている黒鳥 伸雄(くろとり のぶお)と言います。2019年10月12日にAMBIRDをオープンしました。

店名のAMBIRDは造語です。僕が好きな浅煎りのコーヒーって琥珀色をしているんですが、英語にするとAmber(アンバー)、そして私の苗字・黒鳥の鳥/Bird(バード)をあわせてAMBIRDにしました。

琥珀ってパワーストーンでもあるんですが、「悪いものを吸っていいものをはき出す」という効果があるらしいんです。ここも、パワーストーンのように、疲れた方がお店に来たとき、その人の悪いなにかを吐き出してもらって、少しでも軽い気持ちになって帰って欲しい、という願いを込めてつけました。

あと、鳥/Bird(バード)は卵を産んで孵化(ふか)するので、生まれ変わるとか、羽ばたく、自由、っていう意味も含めています。店名の由来って、実はお客様からよく聞かれるんです。ちょっとわかりづらかったかな(笑)

Q .コーヒーとの出会いは?

実は、コーヒーがすごく好きだからコーヒー屋になった、という訳ではないんです。どっちかというと、接客業が好きなんです。僕は東京出身で、都内に5店舗展開するオニバスコーヒー (ONIBUS COFFEE)というコーヒー店で働いていたことがコーヒー屋になったきっかけです。オニバスとの出会いこそ、いまの僕の基盤、核になってますね。コーヒーの技術、知識はもちろん、接客業っていいなって思うことができた大切な場所だし、良い経験をつむことができました。自分の武器になるものはなんだろうって考え始めた時があって、そこで初めて「あ、コーヒーって武器になるな、自分に合ってるな」って感じることができたんです。それからコーヒーの世界にどんどんのめり込んでいって今に至ります。

Q .なぜ上諏訪で開業を?

最初はただただ東京を出ようと思っていたんです。東京が嫌いになったわけではないんですが、とにかく出ようって。ずっと自分のお店を持ちたいとは思っていたんですが、その当時、場所はきめてなかったし、どこでもよかったんです。東京を生活拠点にしながら、まずは動きやすい距離感で探してたんです。長野、新潟、福島、栃木あたりをうろうろしてましたね。どれも新幹線一本で動ける場所です。その間、リビルディングセンター(上諏訪)やマスヤゲストハウス(下諏訪)にはとてもお世話になりました。そこで出会った人たちと交流を深めていくうちに、「あ、ここなら住めるかな、出店もいいかな」と思えるようになっていきましたね。色々な場所を行き来しているうちに、それぞれの場所のことがだんだんとわかってくる訳ですが、上諏訪だけ、僕が好きな浅煎りのコーヒーやエスプレッソのドリンクを扱うお店がなかったんです。昔ながらのオーソドックスな焙煎や深入りコーヒーのお店はあったんですが、浅煎り、かつスペシャルティコーヒー(※)と言われてるような店はなかったんですよ。ないんだったら、僕が最初に出店して、広めていこうって思って出店を決意しましたね。それで、2019年に移住しました。こっちに住みだしてからは、水も美味しいし、乾燥した気候だったんでコーヒーやお茶の保存にとても適しているのがわかったんです。上諏訪でコーヒー屋っていうのは、大正解でした。

Q.移住、開業に不安はなかった?

うーん、特になかったですね。失敗してもいいや、ぐらいの感じでいたからだと思います。むしろ、行動しないと、東京や上諏訪、下諏訪で出会った友人たちから「早く出店しなよ」ってせっつかれそうな勢いでした(笑)。逆に上諏訪に来ない理由がなかったですね。エイヤーって感じで2019年1月には住んでました。リビセンで働きながら出店準備を進めたんですが実は僕、融資に5ヶ月もかかっちゃったんです。これ長い方なんです。

準備金が少なかったことと、この界隈にコーヒー屋の前例がなかったことで時間を要してしまったんですよ。飲食店やカフェだと、単価が高い食べ物を出すから融資が通りやすいそうなんですが、僕の場合、コーヒー一杯 500円前後。利益率が見込めなかったんです。一度、断われそうにもなったんですが商工会の方が協力してくれて、なんとかギリギリ融資を受けることができたんです。そこからは早かったですね。準備金も少なかったので、物件は自分たちで解体から始めてリノベーションしました。リビセンにデザインを依頼、同時進行で水道、ガスなんかの手続きをして、3ヶ月位で形になりました。協力してくれた上諏訪のみなさん、友人には感謝しかないです。

Q.お店のコンセプトは?

一番は、「お客様暮らしの豊かさに対して、きっかけを与える存在になりたい」と思っています。お店の空間、お客様同士のコミュニケーション、コーヒーやお茶の味覚。小さいことだけど、暮らし豊かさにちょっとだけプラスになる“きっかけ”でありたいなって思っています。

あとコンセプトではないんですが、「おすすめは?」って聞かれたとき、逆に「飲みたいのなんですか?」って聞き返してしまう。基本的におすすめはしないんです。僕がいくらおいしいと思ってるものでも、お客さんが美味しいとは限らないですから。ちゃんとお客さんの好みをリスニングして、飲みたくなったものを提供した方がお客様ご自身が気持ちよくお店で過ごせるかなと思ってますね。

Q.ラインナップを教えてください

メーンは自家焙煎コーヒーです。コーヒーはやっぱり自分を表現できるものですから。豆は東京時代の商社さんから購入していて、店には、浅煎り4種類 、中煎り2種類、深煎り2種類を用意しています。お客様の嗜好に合わせるようにしています。

プラス、日本茶もメニューに取り入れてるんです。煎茶やほうじ茶です。

メニューに日本茶があると驚く方も多いですね。なぜ日本茶か、というと、スペシャリティコーヒーの想いにも繋がるところがあるんですが、お金を払ってお茶を飲む、という感覚や文化が少ないと思うんです。サービスでお茶を出すところはあるけど、お金を払ってお茶を提供する場所はこのあたりではほぼない。でも生産者さんにも生活があるし、お金をうまないと経済も回らないですから。貴重な一杯をサービスや無料では提供したくないなと思ったんです。お金を払って飲める文化を作った方がいいんじゃないかと思って。

コーヒー同様、茶葉にもこだわりをもってます。実際に農園に行って信頼ある方から購入してます。どの取引先も自社完結できる工場をもっているところばかり。茶葉って摘んだ瞬間から発酵がはじまるらしいんです。なので、摘んだらすぐに加工できる場所を選んで取り引きさせてもらっています。みなさん、茶葉に対しての熱量が半端ない方ばかりですよ。真摯にむきあってます。取引先の方たちとのご縁も、茶葉もずっと大切にしていきたいです。

Q.オープンしてみて

仕込みからなにから僕ひとりでやってるんで宣伝なんてできてないんですけど、オープンしてから、地元の方がたくさん来てくれました。本当に地元の人に助けられると感じます。このつながりは本当に大事にしたいです。地元の方を大切にしたい気持ちは大きいし、常にベストなコーヒー、フード、お茶を提供しつづけけたいと思います。

バタートースト(単品450円)とほうじ茶ラテ(単品500円)

Q.どんなお店にしていきたい?野望はありますか?

諏訪のコーヒーといえばAMBIRD!にしたいです。

野望についてですが、欲をいうと、AMBIRDを他県にあと2店舗、つまり3店舗つくりたいです。なぜ3店舗かというと、それぞれの店舗にスタッフを2~3人雇う、その子たちを定期的に勤務場所をシャッフルするんです。そうしたらその子たち自身がいろいろな地域を知れて視野が広がってAMBIRDやスペシャルティコーヒー、日本茶の魅力を発信できる人材になってくれると思うんです。色々な地域にファンを作ることができるし、お客様も3地域に少しずつ増えていく仕組みを作りたいんです。それぞれの場所に住む人たちの「暮らしの豊かさのきっかけ」になりたいという想いにつながってます。そんなことができたら面白いなーって。野望、というか、最終目標ですかね。10年かかっても実現させたいことです。

※スペシャルティコーヒーは、コーヒーの歴史やコーヒーそのもののあり方を見直すため生まれた概念。消費者だけでなく「生産者にも利益をもたらすコーヒー」であることを目指す。日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)より

【店舗詳細】

AMBIRD

TEL:0266-75-5634

営業時間:7:00~17:00(水曜、第一、第三木曜定休)

住所:諏訪市諏訪2-2-2

駐車場:徒歩30秒くらいに駐車場2台あり(AMBIRDと書かれている場所に停めてください)

プチ情報:子連れOK

おすすめ記事