2021.10.30

ゆるっとした居心地の良さがクセになる。「ニシミヤゲストハウス」の魅力

2020年秋、「ニシミヤゲストハウス」が上諏訪にひっそりとオープンしました。なんとも不思議な魅力を湛えたこのゲストハウスは、宿として、バーとして、時に地域の人々の活動の場として、人々を迎え入れています。店主は、大工であり調理師でもある長﨑洋一さん。すべて自身の手で創り上げてきたこの空間に対する長﨑さんの思い入れを伺ってきました。

ニシミヤゲストハウスができるまで

Q. 長年ここにあった建物をご自身でリノベーションされたとか。その経緯を教えてください。

ここは元々、老舗の旅館だったんです。僕の実家が斜向かいにあったから、小さい頃から旅館の主人のおじちゃんとおばちゃんはご近所付き合いの仲で。2年くらい前に、もう旅館の営業を辞めて閉めちゃうって聞いたので、売って欲しいと直接交渉しました。僕は本業がフリーランスの大工なんで、できることはすべて自分でやろうと。コツコツと約1年かけてリノベーションしました。本業の仕事の傍ら隙間時間に一人でやってたから時間がかかっちゃって。途中、「いつできるの?」っていろんな人から聞かれましたね(笑)。

このゲストハウスは1階がバーラウンジで、2階に客室が5部屋あります。

店主 長﨑洋一さん

一番のこだわりは、ほぼ友人から譲ってもらった古木材を使ったこと。1階ラウンジの床とカウンターの一枚板だけは注文したけど、それ以外はもらったものを生かそうと。壁も床も一度全部剥がして、断熱材を入れ直して、これらの木材を組み合わせていきました。木って、調湿作用に優れているです。夏は湿気を吸ってくれて、冬に吐き出してくれる。だから梅雨時はカラッとしているし、冬は結露しにくい。油を塗って手入れしていくと、だんだんといい感じに色が変わってきて味わいが出てくるし、傷ついてもそれがまたいいアクセントになったりするんですよね。

なんといっても、自分で作ると、自分の好みに合うものができるのがいい。

ソファーや椅子、雑貨、冷蔵庫、調理器具などなど、木材だけじゃなく、ここにあるものの多くが、譲り受けたモノたちです。古いものならではの味わいとか、補いながら使い続ける良さとか・・・・・・、自分が「いいなあ」と感じられるモノに囲まれたスペースになりました。

前の旅館の客室を生かしつつ、趣味で集めている古布で壁をアレンジ。粋なアクセントに。

こだわりのバーラウンジ、イベント開催も

Q. ゲストハウスの運営形態は?

今はコロナ禍なので、宿泊もバーも金・土曜日と祭日前に限定して営業しています。本当は毎日営業したいんですけどね。バーだけの利用も可能で、女子会などで貸し切り利用する人もいます。予約の時に、料理はエスニック系がいいとかイタリアン系がいいとか、好みを言ってもらえれば、できる限り対応しますよ。

ふらっと、「今日、やってる?」「バー、行っていい?」と連絡をもらって、「やってるよ」「なんか食べる?」っていう感じでゆる~くやっています。

長崎さんはバーテンダー経験もあるため、カクテルもいただける。

Q. この広いラウンジでいろんなイベントもできそうですね!

ここをオープンした時期がコロナ禍と重なってしまったので、いろいろとやりたいイベント企画はあっても、なかなか思うように実現できていないけど・・・・・・。これまで、ハロウィンパーティーやおでん屋台、餃子パーティーなどをやりました。

地域の人たちが集まったり活動したりするシーンに活用してもらうこともあります。保育園の卒園パーティーに使ってもらったり、我が家は毎年年末に餅つきをやるんだけど、去年は近所や知り合いの家族にも声をかけて、駐車場で餅をついて、このラウンジでつきたての餅を食べたりね。あと、お母さんグループの企画で、使わなくなった子どもの服とかおもちゃとか学校用品を持ち寄って交換する「ぐるぐる市」の会場になったこともあります。

ぐるぐる市では、お母さんたちがデザートを、長﨑さんがカレーを用意。/写真:元気なひとたちの会提供
誰かに譲りたいモノを掲示して知らせる「ぐるぐる伝言板」は、今もゲストハウスに

大人も子どももくつろげる場所

Q. インパクトのあるこの黒板アートはどなたが?

これは友人に描いてもらってるんです。「そろそろ描きに来て~」と頼んで、そのときの季節感だとか思いついたモチーフで好きに描いてもらっています。あそびに来た子どもたちも描きたくなるから、下の方は空けておいてもらって。チョークを置いておいて、この黒板で好きにあそべるようにしてあります。

子どもがワイワイしていてもいい場所にしたいんですよね。

子どもたちが群がる人気のソファーも知り合いから譲り受けたもの。 破れた箇所を覆うように、長﨑さんが古布でパッチワーク。

ゲストハウスの名前の由来

Q. なぜ、「ニシミヤ」?

この通りは旧甲州街道だから昔は旅館が多くて賑わっていたそうで、その名残でこのあたりのじいちゃんばあちゃんは今でも屋号で呼び合うんですよ。うちもこの土地で炭焼きと八百屋の商売をやっていたらしく、その屋号が「西宮(ニシミヤ)」だったと。僕にとっても馴染みのある呼び名で、名付けるなら「ニシミヤ」だなあって自然に思い浮かびました。

明治末~大正初期のこの付近の地図。中央あたりに「西宮」の文字が見える。
その斜向かいに「上原」とある場所が今の「ニシミヤゲストハウス」
代々の屋号を引き継いだ長﨑夫婦手作りの看板。

■和風・洋風・中華…オールジャンルなお料理たち

Q. お料理も長崎さんの手作りなんですよね?

居酒屋で雇われ店長をしたり、タイ料理屋さんの厨房を手伝ったりした経験もあって、エスニック、中華、韓国料理、洋食、和食・・・・・・、いろんなジャンルの料理を作ります。畑もやってるから、旬の採れたて野菜をふんだんに使ってね。

料理レシピのサイトにもお世話になって(笑)、いろんな人のいろんな作り方を参考にしながら、自分流にいいとこ取りをしています。結果、美味しければハッピー!ってことで!

取材時にご馳走になったグリーンカレーと空心菜の炒め物。 空心菜は長﨑家の畑から。

これからの「ニシミヤゲストハウス」

Q. なんでも作れてしまう長﨑さん。今後をどう思い描いていますか?

下諏訪にある『マスヤゲストハウス』に出会って、「こういうのっていいな」と感じたのが、僕がゲストハウスを作ろうと思ったきっかけ。みんなが集まれるスペースを自分も作りたくなったんです。

地元の人と旅行者が交流できるのって、ゲストハウスならではでしょ? 宿泊している人とふらっとバーを利用しに来た人がお酒を吞みながら「どこから来たの?」なんて話して。僕もそこに混ざったりして。だから、共有スペースは重要。広くしたかったんです。

今はまだコロナ禍で、不特定多数で集まってワイワイするのが難しいし、宿泊利用も少ないけど、状況が落ち着いてきたら、もう僕の仕事はここ一本でやっていけるくらいに活気づいてくるといいなあと。イベントももっとやっていきたい。このハコを使って何かやってみたい!という人がいれば、レンタルの相談にも応じます。

みんなのあそび場にしていきたいですね。

ライター/中野明子 撮影/澤井理恵

(この記事は2021年9月取材時点の内容です。)

なんとDJブースまで手作り! 音楽系イベントもできる。

編集後記
さてこのお方、長﨑洋一さん。一体何者なんでしょう。リノベしちゃうわ、料理は美味しいわ、チクチク縫い物もいけるわ・・・・・・。この日お召しになっていた浴衣も実はご自身の手作り。取材中、「“衣食住”全部自分でできれば生きていけるじゃん」とサラッと言ってのけたその言葉をまさに体現している方です。長﨑さんのこれまでの経験と知識と技術の集大成。子どもから老若男女までほわわ~と受け入れ、決して派手ではないけれど、かめばかむほどジワジワと味が出続ける絶品スルメのような長﨑さんとこのニシミヤゲストハウス。ぜひ、ご体験あれ。ああ、ここでならいくらでも呑み続けられそう・・・・・・。これからが楽しみなゲストハウスです!

店舗情報
ニシミヤゲストハウス
住所:諏訪市湯の脇 2-15-7(上諏訪駅から徒歩5分)
TEL:090-1826-3475
*毎週金・土・祝日前日 17:00~
*元気に営業中!コロナ禍が落ち着いたら毎日営業を目指したい!
*駐車場あり。満車の場合、上諏訪駅横の市営駐車場(3時間無料)をご利用ください。

〈ゲストハウス〉
1泊 3,500円/共用シャワールーム、レンタサイクルあり。

〈バー〉
現在予約のみ対応。料理内容の相談応じます。

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