2022.02.24

LSM対談企画
生きることは働くこと。
一歩踏み出して人生をもっと豊かに。

ReBuilding Center Japan(通称リビセン)協力のもと、LSM対談企画第1弾に続き、第2弾を実施。今回はリビセン入社5年目、岩手県出身の千葉夏生(なつみ)さんと入社1年半、東京都出身の小林佑子さんによる、先輩後輩対談企画です。縁もゆかりもない諏訪に移住したきっかけ、リビセンで叶えた働く喜びについてのストーリーは必読! 読み終えたあと、リビセンに買い物に行きたくなりますよー。

対談場所/リビセン社宅

左/千葉夏生(なつみ)
入社5年目のベテランスタッフ。古材を使った商品制作、レスキュー、ワークショップ、店舗まわりなどを担当

右/小林佑子
入社1年半の新人さん。通信販売、広報担当。ポップ制作、webサイト更新、公式LINEの配信、インスタ投稿などを担当


Q. リビセンで働く前のこと、諏訪に移り住むまでの経緯を教えてください。

千葉/私は岩手県出身です。高校卒業後、盛岡に本店がある古着屋さんでずっと働いていました。19歳から働いていたので古着屋一筋でしたね。働き出して11年目を迎える30歳のときには岩手県内の4店舗のうち、1店舗の店長を、そのほかの4店舗も運営統括、岩手県南エリアのエリアマネージャーを任されていました。この古着屋さん、いまでは全国に店舗を構える古着屋に成長しているんですけど、私がいたときに、全国展開をスタートさせようとしていたんです。11年間、働いてきましたし、着実にキャリアを積めてきていたので、やりがいを感じていたんです。でも、これからの自分の人生や未来、キャリアアップを考えたとき、ここにいちゃだめだ、不満はないけどこのままでいいのかな、と思ったんですよね。

千葉夏生(なつみ)。オープン当初からいる入社5年目のベテランスタッフ。

諏訪にきた理由は、リビセンで働きたいから!…ではないです。初めて長野に来たのは2015年。長野県茅野市で開催された小屋フェス(建築家、工務店など、多ジャンルの職人が手がけた20棟の小屋を展示、体験できるイベント)に参加したのがきっかけです。小さい時からタイニーハウスや小屋っていうのが好きで、「このイベントは行かねばならない!」って思いました(笑)。

当時は岩手県からの移動ですから、ネットで宿泊先を調べて、下諏訪のマスヤゲストハウスに泊まりました。これが僕にとって初めての長野県滞在。そこでオーナーのキョンちゃんと話をしていく中で、リビセンを始める前の東野唯史さん・華南子さん夫妻の存在を知り、お二人の活動を知ればしるほど、活動が気になって気になって。岩手に戻ってから、東野夫妻が当時手がけていた気仙沼の現場に足を運んだほどです(笑)。
そんなとき、ちょうどリビセンがオープニングスタッフを募集していたんです。このまま岩手で古着屋さんで働き続けるのもいいけど、転職するときは、働く場所はもちろん、何かを変えないと人生は変わらない!、と思い、思い切って履歴書を送ったんです。

小林/私は東京都出身です。
ここに来る前は、都内で大手食品ECサイトのwebデザインなどの仕事をしていました。

小林佑子。入社1年半の新人さん。

私がリビセンを知ったのは、リビセンのかわいいショップカードが家にあったから。そんな些細なきっかけなんです(恥)。どうして家にリビセンのショップカードがあったかは、覚えてないです(笑)。

古道具に興味があったわけではなくて、どちらかというとカフェの方に惹かれていました。食べることも、おしゃれな空間にいることも大好きなので。いつか長野にいく機会があれば行きたいなと思っていてショップカードを保管していたんだと思います。

いまから4年ほど前、松本に住む友人を訪ねた際、リビセンにも行くことができたんです。その時、薬を包む紙を買って帰りました。なぜか心惹かれたんですよね。そこでリビセンサポーターズ(リビセンの業務を一定期間体験できる働き方)のことを知ったんです。まだ食品会社に所属していたのですが、興味があったのでサポーターズとして関わりはじめました。2年連続、1週間有給をつかって参加してスタッフとの交流も楽しんでました。

サポーターズでは、古道具の掃除を担当したんですが、スタッフみんなのテンション、気持ちの良さに何度も感動したのを覚えています。特に、先輩スタッフさんのリョウコさんは、私がちょっと作業をする度に「ありがとう」って満面の笑顔で言ってくれるんです。すごく感動したのを覚えています。なんて気持ちの良い会社なんだろうって。

そんな素敵な環境でサポーターズをしながら、東京と長野を行き来しているとき、ふと、働く環境を変えるならいまかも、と思ったんです。東京は実家がある場所ですし、いつでも帰ろうと思えば帰れる場所です。ただ、諏訪で過ごした時間が私にはとても居心地がよかったんですよね。気づかないうちに心が奪われていたのでしょうね。初めてリビセンで買った薬を包む紙を買った時みたいに、自然に手に取っていた、自然に諏訪にいきたくなっていた、みたいな感じですかね。そんな思いがきっかけで、リビセンの採用募集を知り、タイミングを見て履歴書を送った、という流れです。

Q.お二人とも、履歴書を送ったタイミングは違えど、リビセンに魅了されていったようですね。採用試験(面接)を経て、働き出すことに?

千葉/そうですね。実は僕の面接、2時間くらいあったんですよ。長いですよね(汗)。面接する前から東野夫妻とは会っていたのであまり緊張はせずに、長野に移り住むことやリビセンのビジョンなんかもいろいろ話すことができました。ちなみに、僕のニックネームは「どんどん」なんですけど、これ、面接のときに華南子さんから初めて、そうよばれたからなんです。ニックネームの由来は、前職の古着屋さんの店名が「ドンドンダウン」だから。

履歴書に書かれてあった社名がかなり目立ったんでしょうねー(笑)。

スタッフやお客さんの中には、僕の本名を知らない人もいるんじゃないかな(笑)。

小林/実は私は、1回目の面接では採用されなかったんです(涙)。2020年1月のことです。

売り場スタッフを希望していたんですが、「売り場に立つ人は声が大きく元気な人がいい」と言われちゃって(笑)。ごもっともなんですけど、少し落ち込みましたね。その後もゆるーく、東野さんたちと連絡は取り合っていたんです。

それからまもなく、世間はコロナ禍。リビセンが通販に力をいれていこうとしたタイミングということもあり、「リビセンのオンラインや通販を強化してほしい」とお声がけいただいたんです。二つ返事で「ぜひ!」でしたよ(笑)。

それから食品会社にやめたい旨を話し、有給を消化しつつ、引っ越しの準備もしつつ、着々と諏訪で生活する準備を整えてました。迷いはなかったですね。諏訪って、東京からの距離感もちょうどいい。駅も近いし、田舎過ぎない。あらゆる面でちょうどいいのがこの諏訪の魅力ですかね。クルマを持っていない私でも自転車さえあれば、ある程度いろいろなところに移動もできちゃいますから。

それに、社宅の存在は大きかったです。社宅って初めて利用しましたけど、右も左も分からない諏訪で、スタッフのみんながいろんなところに連れてってくれる。社宅っていいシステムだなって改めて感じました。

Q. 時期は違えど、リビセンで働きだしたお二人。
仕事のこと、働くということ、思い出エピソードなど、教えてください。

小林/私は働き出してまだ1年半なんですが、主にリビセンの通信販売、広報を担当し、POP制作、webサイト更新、公式LINEの配信、インスタ投稿などをしています。前職は大きな会社だったので、自分の仕事の範囲が決まっていたんですが、リビセンは、規模感が小さいからひとりでやることが多いし、お客様との距離も近い。それと、働いていて「いいことしてる」って思えるんです。会社に対しても、地域に対しても。東野夫妻が掲げるコンセプトやエネルギーを循環させていることに共感できるからだと思います。もちろん、リビセンも完璧ではないからゴミも出るんですけど、なるべくゴミを出さないような方法を、スタッフみんなで考え、実践しているんです。向き合ってる姿勢が誇りに思えるし、働いていて嬉しいなって思えます。

千葉(通称どんどん)/私のいまの業務は古材を使った制作です。最近では、後輩に任せてレスキュー(解体が決まった建物から古材や古道具を引き取りに行くこと)の現場へ行く回数は減りましたが、レスキューに行くと、ギリギリの状態をよく見ていました。ギリギリ、というのは、捨てられるものに対して「ギリギリに間に合った」という意味です。僕らが来なかったら捨てられる古材、古道具がたくさんあります。捨てたらゴミ、だけど、レスキューし、きれいに磨き、いろいろな工程を経て、次の持ち主につなげられる。

リビセンでは、古材や古道具の入口(レスキュー)と出口(新しいオーナーに渡ること)に携わることができるんです。レスキュー、つまり救ってきたものをまた違う人に使ってもらえる出口に立ち合えると、とても気持ちがよくなります。働いていてよかった、と思える瞬間です。

これまで5年間を振り返ると、全部が全部すばらしいレスキューだったとは言えません。レスキュー先では、諸事情でレスキューできないものもあります。思わず「もったいない」と口に出してしまいそうな時もあるんですが、引き取りに行く私たちが「もったいない」という言葉を言ってしまうと、手放す覚悟をした家主さんの気持ちを肯定してあげられなくなってしまいます。家主さんが考えたすえに手放す、という判断をしていることを尊重したいので、レスキュー中はできるだけ、「もったいない」という言葉は出さないようにしています。

印象的だったレスキューがあります。ご高齢のおばあちゃんの生まれ育ったお家を解体する現場でのことです。私たちが作業している間、最初は遠巻きにみていた家主のおばあちゃんが「こういうもの(古道具)もいいのかしら? 使えるのかしら?」って言いながらものの歴史を語ってくれるんです。ものには全部歴史があってストーリーがあるんですよね。ちゃんと次につなげたい、つなげなきゃって思いが湧いてきた現場でした。現場の私たちしか知らない貴重な経験だなーってしみじみして今でもよく思い出すんですよ。

小林/どんどんさんの話のつづきになりますが、レスキューしてきたあとは、リビセン広報・通販担当の私の腕のみせどころなんです!

リビセンの古道具や古材のほとんどは、レスキュー先のストーリーが分かるようになっているんです。オンラインストアでも、なるべくレスキューチームから引き継いだもののストーリー、歴史を添えていこうと思っています。さっきのどんどんさんみたいな経験をお客様にも体感してもらいたいんです。ものには歴史がある。それを取りこぼさないようにレスキューチームと連携して、広報担当の私が次の走者であるお客様に渡すことができればいいなと思います。あー、まだまだやりたいことがたくさんあるんですよねー(汗)

千葉(どんどん)/頼みましたよ、佑子さん(笑)。

制作現場での嬉しい体験をもうひとつ。レスキューしていると、どの古材がどんなお店で使われていたか覚えているんですよ。古材を眺めながら、「あ、これって確か昔どこどこに使われてたんだよな」って記憶が蘇ったりするんです。

それが思いがけず、店舗のデザインにとても役立つときがあるんです。例えば、パン屋さんの店舗デザインで、オープンカウンターの仕上げの材を作ろうとしていたときの話。古材の中に、レスキューしてきた捏ね板があることを思い出したんです。小麦粉でうどんをこねていた材なので、新店舗のパン屋さんのカウンターにぴったりだと思ったんですよ。オーナーさんにこの古材のことを説明したら、喜んでくれて。うどんがつくられてきたこね板が新しい環境で、次はパンを乗せる土台となっていくんです。

その光景を想像すると嬉しくなるし、古材のストーリーがうまくつながったと思える現場でした。

Q.最後に、これからやりたいことを教えてください。

千葉(どんどん)/当初は東野夫妻含め、5人からスタートしたリビセンなんですけど最近は、通販もカフェも大きくなってきました。

ここ2年くらいで一気に人が増えたので、人材育成という仕事も加わってきたかな。自分の仕事に没頭しやすいので制作し出したら夢中になっちゃうけど、もう少し引いた目線でみんなと成長できたらいいなと思っています。プライベートの話になりますが、昨年結婚したんです。奥さんとの暮らしも大切にしたいと思っています。諏訪での暮らしを楽しみながら、リビセンでの活動ももっと力を入れていきたいです。

いまの暮らしが気に入っているんですよねー(しみじみ)

小林/私は広報として、外への発信にもっと力を入れていきたいです!

最近強く思うことがあるんです。「リビセンのプロダクトってもっと売れていいのにー」って。オリジナルプロダクトとかめちゃくちゃかっこいいじゃないですか。私にできること、やれることはまだまだあるなって強く感じます。

ファンづくり、ブランディングに力をいれて取り組んでいきたいです!

千葉(どんどん)/気合入ってますね(笑)。佑子さんはいつも仕事を“自分事”としてくれていると感じます。1年半だけしか見てないですけど、佑子さんって納得しないと仕事にしない、形にしないんですよ。だから一緒に働いていて安心なんです。こういうふわっとした雰囲気がありますけど、芯がすごーく強いかも。ほんと心強いです。

小林/恥ずかしいですけどうれしいです。これからも“自分事”として、できることから始めていきます!

おわりに。

最後に、これからリビセンで取り組みたいこと、やりたいことをLSMオリジナルフリップに書いていただきました。打ち合わせしていないのになぜか語尾がそろうというリビセンマジック!語尾にもご注目を。

どんどんさん、佑子さん、貴重なお時間ありがとうございました!

対談場所は2021年の1月に稼働し始めたリビセンの社宅。
オール電化&太陽熱温水器はCO2排出が少ないことが魅力。
また、同社宅はパワーシフトし、「みんな電力(https://minden.co.jp)」を使用、電気は再生エネルギー100%となる。
リビセンサポーターズになると宿泊も可能。

編集後期

心地よいテンポで話を盛り上げてくれた先輩どんどんさんと後輩佑子さんのお二人。チーム力の高さがとーってもわかった対談となりました。私たちLSMチームもリビセンチームに追いつけるよう、これからもより良い取材、より良い原稿作りを目指していこうと思わせてくれた時間となりました。さぁ、みんなでこれからリビセンへレッツゴー!

聞き手兼ライター 澤井理恵 写真/古厩志帆

(この記事は2022年2月取材時の内容です)

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